JICAによる「VJ-FERI」の構築がもたらす変革と課題

日本の深刻な人手不足、特に介護分野における人材確保は喫緊の課題となっています。その解決策の一つとして注目されているのが、外国人技能実習制度の活用です。しかし、この制度には様々な問題点が指摘されており、抜本的な改革が求められています。そんな中、国際協力機構(JICA)が主導する新たな取り組み「VJ-FERI」が発表され、大きな注目を集めています。この記事では、ベトナムの介護系送り出し機関であるKAIGO VIETNAMの視点から、「VJ-FERI」がもたらす変革と課題について考察します。

新たな枠組み「VJ-FERI」の発表

日本の外国人労働者受け入れ制度において、JICAがベトナム政府および国際労働機関(ILO)と連携し、技能実習生の負担軽減を図る新たな枠組み「ベトナムから日本への移住労働者に関する公正で倫理的なリクルートイニシアティブ(VJ-FERI)」の構築を発表したことは、画期的な転換点となります。この取り組みは、技能実習生、特にベトナムからの実習生の権利保護と就労環境の抜本的な改善を目指すものですが、我々ベトナムの介護系送り出し機関にとっては、大きな変革と挑戦をもたらすものでもあります。

従来の技能実習制度下では、実習生が来日のために多額の借金を背負うことが常態化しており、これが様々な問題の根源となっていました。ベトナム人実習生は平均で65万6千円もの手数料を支払っており、これは彼らの母国での平均年収の1.4倍に相当します。我々送り出し機関は、この手数料を通じて事業運営や質の高いサービス提供を行ってきました。しかし、この経済的負担が、実習生たちの権利侵害や労働搾取の温床となっていたことも認識しています。

「VJ-FERI」と新制度「育成就労」の関係性

新たな枠組み「VJ-FERI」では、実習生の来日費用の半額以上を日本の採用企業が負担する画期的な指針が設けられます。これにより、実習生の経済的負担が大幅に軽減されることは歓迎すべき点です。しかし同時に、我々送り出し機関の収入が大幅に減少することが予想され、事業継続性に深刻な影響を与える可能性があります。

この取り組みが民間企業と連携して進められる点は注目に値します。トヨタ自動車や味の素といった大手企業が参加する一般社団法人「JP-MIRAI」が運用を担当し、2024年秋には実施が予定されています。我々としては、この新たな枠組みの中で、ベトナムと日本の架け橋としての役割を維持し、発展させていきたいと考えています。

「VJ-FERI」は、2027年に始まる新制度「育成就労」の先取りとしても位置づけられています。長期的には、この新制度がベトナムの介護人材育成にも良い影響を与える可能性があると期待しています。

JICAがこの取り組みをベトナム以外の国々にも拡大することを検討している点は、国際的な人材獲得競争の観点から重要です。2023年末時点で、日本の技能実習生40万5千人のうち20万3千人がベトナム人であり、我々は最大の送り出し国としての地位を維持したいと考えています。

「VJ-FERI」の成功に向けて

我々送り出し機関としては、この新制度の導入に際し、以下の点を提案したいと考えています:

  1. 送り出し機関の役割と価値の再定義
  2. 段階的な制度移行による急激な変化の緩和
  3. 日本側との協力関係強化による新たなビジネスモデルの構築
  4. 実習生の質の維持・向上のための継続的な投資の確保

「VJ-FERI」の成功は、実習生、日本の受け入れ企業、そして我々送り出し機関の三者が win-win-win の関係を構築できるかどうかにかかっています。この取り組みが、技能実習生の権利保護と日本の経済成長の両立を実現する転換点となることを期待すると同時に、我々送り出し機関の声にも耳を傾けていただくことを強く希望します。日本が真に開かれた国際的な労働市場を構築し、グローバルな人材から選ばれる国となるためには、我々送り出し機関の専門性と経験も不可欠だと考えています。