[論文]介護現場で見られる方言と、技能実習生外国人の理解度について

Nursing assistant taking care of senior man
Nursing assistant taking care of senior man

研究ノート

「医療・介護現場の方言を外国人はどう理解するか」

――他地域出身日本人と比較して――

後藤 典子

論文

© 2015 公益社団法人 日本語教育学会

要約

この論文は介護現場における外国人の日本語理解について書かれた論文です。

特に方言をどう受け取るか?という観点から書かれているところが珍しく、技能実習生や特定技能における介護日本語教育を実施するに当たり、参考になる点が多い論文でした。

介護現場における方言

日本語教育の限界

「医療・介護の教育では、方言は使用せず共通語を使用するよう指導することが基本となっている」

と筆者が述べるように、ベトナムにおける技能実習生及び特定技能の送り出し機関でも、介護日本語教育は基本的に標準語のみを教えています。これはEPA,特定技能、技能実習生などの外国人介護従事者が提供する介護サービスにおける日本語レベルを一定の品質に保つため、もちろん入国に要するN4,N3などの日本語検定に対応するためにほかなりません。

当送出機関は最短2ヶ月でN4合格や、半年でN4合格率95%などの高い実績を 誇るベトナムでも有数の技能実習生、特定技能外国人介護日本語教育機関ですが、方言の教育については手が回っていないのが現状です。短い期間の中で一定の教育成果を求められる中では、致し方ないことと言えます。

患者さんに与える安心感

しかし、筆者はこうも述べています。

「医療・介護現場では、患者が痛みや苦痛、倦怠感、疲労感、不快感などの症状を正しく詳細に伝えるために方言を使用することが多く、医療関係者が方言に拠る発言をしっかり受け止めることが安心感や信頼感に繋がり….」

このように、現場および患者さんにとっては、方言でのコミュニケーションが相当程度重要であり、精神的な充足感を与えるに重要な要素であるということは、私達介護送出機関において、方言学習を取り入れ、また少なくとも検討することにおいて十分な動機づけになるでしょう。

Dictionary details

外国人の理解度

引用:前傾論文より

次に、論文中の統計を見てみましょう。これは、実際の現場において外国人と日本人に様々な方言を用いた会話を聞かせ、その理解度を比較した統計です。

本表を見ると、痛みがある などの重要な要素についてはある程度の理解が得られていますが、形容や結果などの曖昧な内容を指す言葉については理解度が低いことが伺えます。

また、山形弁では「しゃあますする」=「もてあます」という例が挙げられていますが、標準語と方言の内容に差が大きい場合においては理解が難しいという結果が出ています。もちろん、これは日本人の標準語話者にとっても困難なことではありますが、日本語話者と外国人介護技能実習生においてこの様な表現の理解度に一定程度の差があるというのは興味深い事実でしょう。

ベトナムにおける方言教育

次に、ベトナム現地の様子を考えてみましょう。

介護日本語教育の専門家である当送出機関Kaigo Vietnamと、Viracoの日本語教師に尋ねてみました。

当送出機関の日本語教師は優秀な教師でもありますが、EPA介護福祉士制度を利用し、日本で介護福祉士資格を取得し、5年以上勤務した経験を持つ優秀な介護士でもあります。

インタビューに拠ると、実際の教育現場においては方言の教育についてはごくごく限定的で、特に興味を持った生徒が大阪弁など特徴のある方言について教わることがある程度であるということです。

残念ながら現時点で当送出機関がベトナムにおいて技能実習生や特定技能候補者の皆さんに、十分な方言教育を行っているとは言い難いところがあります。

しかし、当送り出し機関の特徴的なプランである「奨学待機制度」を利用すれば、方言教育を実施できる可能性があります。

当送出機関の奨学待機制度

Student studying at library.

当送出機関の特徴である奨学待機制度は、すでにN4試験に合格し、技能実習生としてすぐにでも日本に入国できる学生に対し、
当送出機関の奨学給付によって、追加の学習を行わせながら待機させている制度のことです。

この制度により、通常は面談から1年近く掛かる入国時期を、最短4ヶ月程度と現行技能実習生法制度上最短の期間に短縮しています。

よく特定技能外国人と比較されることが多い技能実習ですが、特定技能の場合は日本語学習に半年以上を要することが多く、また採用にも時間がかかる傾向があります。本奨学待機制度は、早く外国人介護従事者を受け入れたいという介護施設様にとって、非常に有益なご提案となることと思います。

追加方言教育について

連携監理団体資料より

当送出機関の場合、すでに国の技能実習生受入の基準であるN4試験に合格済の生徒がベトナムに待機しています。

しかし、入国関係書類提出と受入には3-4ヶ月以上の期間を要しますので、その期間内に追加の学習をすることができます。

通常の実習生はこの技能実習法制度上どうしても発生してしまう待機期間ベトナム国営の看護・介護士養成機関である、ベトナム国立ハードン看護大学で介護実習に従事したり、日本語の追加学習をしていますが、ご希望の送出機関様や介護施設様がいらっしゃいましたら、追加の方言の学習を行うことが可能です。

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まとめ

今回は介護現場における方言の重要性について学ぶとともに、当送出機関でお試しいただける追加方言教育の可能性についてご紹介いたしました。

介護に従事する技能実習生・特定技能外国人と、介護施設様、医療施設様、そしてなにより患者さんの3者にとって最も重要な、円滑なコミュニケーションと安全を確保するために、当送出機関でできることがないか、これからも探していきたいと思います。